2026.06.04 | スペシャル
プロが教える 幼児のための海遊び安全対策
公益財団法人 日本ライフセービング協会
小崎 遼介さん

日本ライフセービング協会で安全対策や幼児教育に取り組んでいる小崎さんに、海難事故の傾向や保護者の方々の注意点を伺いました。
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例えば交通事故の場合、自動運転などのシステム面の拡充によって事故を減らすことができています。
一方、水難事故に関しては、見守りカメラなどのシステムの配備が進められていますが、日本は四方を海で囲まれていて川も至るところにあるため、すべてを網羅することは不可能です。そのほかの対策もおこなわれてはいますが、一定の件数から事故が減らなくなっているのが現状です。

誰にとっても水辺が身近にある以上、スーパーライフセーバーがいれば水難事故をすべて解決できるというものでもありません。
私たちは、誰もが水辺に関する知識や技術を身につけて自主的に危険を避けられるようにすることが不可欠だと考え、水辺の安全教育「ウォーターセーフティ」の普及を通して、事故をゼロへ近づけることを目指しています。

よかれと思ってしたことが悪影響に
近年の海難事故の傾向として挙げられるのは、管理された海水浴場ではない、いわゆる「自然海岸」での件数が増えていることです。
コロナ禍で密集を避けるようになったことから、行く人が少ない自然海岸を選ぶことが増えたことが要因になっていると考えられます。
自然海岸は、かつて海水浴場だった場所だとしても、今はどうなっているか分からず、釣り針が落ちているなど、手つかずなゴミがあったりするかもしれません。
安全という意味では管理されているという海を選ぶべきです。
ライフセーバーや監視員が見守っている海水浴場であれば、溺れたときなどの非常時はもちろん、何か困ったことがあればその土地を知っている人にすぐに相談できますし、たいてい絆創膏等の応急処置の用意もあります。

幼いお子さんがいるのであればなおのこと、海水浴場を選ぶことが海を楽しむための大前提です。
子どもに影響する学校の変化
日本ではほとんどの学校にプールがあり水泳の授業がおこなわれていますが、世界的に見ると公教育で水泳を取り入れている国は割と珍しいと思います。
この授業は水難事故防止に大きな役割を果たしてきました。そのことを体感したのは、コロナ禍の頃のことです。
その時期は水泳の授業ができず、コロナ禍を経て3年ぶりぐらいに臨海学校が再開したとき、海へ入った子どもたちの動き方にぎこちなさが見て取れました。
それはつまり、水泳の授業で学校の先生たちが頑張って水慣れや泳ぎ方を教えてきたことに効果があったことの証だと思います。
しかし、その水泳の授業が最近、日本でも行わない流れになってきており、影響が懸念されます。
野球やサッカーなどの陸上競技と比べて、水泳は運動特性として自分の動きを認識しづらく、しっかりと学べる場が必要です。
海へ行ったときに水中が初めてという状況を迎えるより、その前に水の中でどうなるのかを体感しておけることはとても大事ですので、スイミングスクールに通えるのであればぜひ通うべきだと思います。

本当に子どもを見守るとはどういうことか
幼い子どもと一緒に海へ行くときにもっとも重要なキーワードは、「キープウォッチ(子どもから目を離さないこと)」です。
子どもは一瞬で、そして声を上げることもできずに静かに溺れますので、保護者がその一瞬を見逃さないためにキープウォッチでずっと見ておかなければなりません。
子どもの身長を考えると、浅い海にいても、高さが50cm程度の波が胸元に1回入ってきただけで簡単に流されてしまうことがあります。
また、ただ見ていれば良いというものでもありません。
例えば、保護者が自分は水着も着ておらず、日傘をさして波打ち際にいるのでは、子どもたちを見ていても、何かあったときに間に合わなくなるからです。

助けに行こうとする時点ですでに対応が遅く、流された子どもに追いついたとしても抱っこして泳ぐことはできません。
だからこそ、そうならないように未然に防ぐことが不可欠なのです。
幼児の場合、海へ入るときはまずお子さんに「先に行くからちょっと待ってて」と言って、保護者が先に入りましょう。
そして、ここから急に深くなるとか水温とか海の状態を確認してから、お子さんを入れるようにすることが大事です。
海から上がるときは子どもを先に上げて、親が後から上がる。この入水・退水時のルールをぜひ徹底していただきたいです。帰り際の片付けのときも気をつけてください。「海に行かないでね」と言ったからといって、絶対に海に行かないという子はいません。片付けで目を離した隙に溺れてしまうというのは十分にありえることです。
大人1人で多人数の子どもを見るのはかなり難しく、1対2ぐらいが限界だと思います。
例えば、赤ちゃんを抱っこしながら、お兄ちゃんお姉ちゃんを見ること自体はできるかもしれませんが、何かあったときに助けには行けません。
浮き具がむしろ危険な場合がある
浮き輪を持たせていても油断は禁物です。サイズが大きすぎればスポッと身体から抜けてしまって役に立ちません。もっと危険なのは、車などのような形をしていて2本の足をそれぞれ入れるタイプの浮き具で、この浮き具を使っている状態で海で倒れると、足が抜けないまま起き上がれなくなります。

ライフジャケットであれば脱げることもなく、予期せぬ大きなうねりが来たときにもある程度浮けるので安心です。
ただし、砂場で遊んでいるときに着ていると体温が上がりすぎてしまうといったデメリットもありますので、状況を見ながら使ってみてください。
写真を撮っておくことが助けになる
万が一、迷子になったときの注意点としては、子どもが着ている水着の色や特徴をしっかりと海水浴場の担当者へ伝えられるようにしておくことが挙げられます。
海へ着いたときに記念写真を兼ねて水着姿で撮っておけば、その写真を共有してスムーズに捜索できますし、水着に名前を書いておけばそれも役立ちます。
一方で、迷子になった子どもを海水浴場側が保護して、保護者を探すケースもあります。
その場合、子どもが保護者の名前を言えれば放送ですぐにお呼びできますので、お子さんの年齢にもよりますが、保護者の名前を言えるよう事前に練習をしておくと安心だと思います。
台風の波は驚くほど遠くまで届く
海へ来る前には天候や台風情報にも注意してください。
例えば、関東にいる人の感覚では、沖縄に台風が来ていても気にしないと思います。
その頃、関東は高気圧に覆われていて好天に恵まれているかもしれませんが、台風の勢力や進行速度によってはうねりがもう関東へ届いている場合があります。さらに大潮のタイミングなどと重なり強烈な潮の流れが発生していれば、遊泳を禁止にせざるを得ません。
また、当日は晴れていても、前日の雨の影響で水がとても濁っているとか、釣り針などのゴミが巻き上がっていて危険といった状況もあり得ます。
海水浴場ではその時々の状況に合わせて、遊泳可能かどうかを示す旗を出しています。
晴れていて風もない日でも、前述のような状況では遊泳禁止の赤旗を出している場合があります。

海水浴場によっては、管理しているライフセーリングクラブや都道府県協会等がSNSでその日の海の状況を発信している場合もありますので、確認してみてください。
いずれにせよ日本のどこかで台風が発生しているときに海へ行くことに関しては、かなり慎重になる必要があります。
チャレンジを積み重ねる貴重な体験に
幼児教育の観点から言うと、子どもと関わる大人には「それしちゃダメ、これしちゃダメ」と言わないでほしいと思っています。
禁止事項が多すぎると面白くありませんし、何が危険かも学べなくなってしまいます。
例えば、「裸足で砂浜を歩いたら熱い」ということも経験しなければ分かりません。
キラキラした石を拾えたね、魚がいたね、海水が口に入ってしまってつらかったね、といったように、楽しかったこともびっくりしたことも含め、いろいろな経験を積み重ねていくことが成長には必要であり、それが海へ行く価値になるはずです。
ですので、子どもの「やりたい」を尊重しながら一緒に遊び、チャレンジを認めてあげてください。
すぐに手の届くくらいのそばにいて、子どもの表情や様子を確認しながら安全を見守ることは、成長を見届けることにもつながるはずです。
安全対策については、私たちの協会のホームページでも詳しく説明しておりますので、海へ行く前にぜひご覧ください。

e-Lifesaving
https://elearning.jla-lifesaving.or.jp/




