2021年4月15日
遊びは、子どもの成長期に欠かすことのできない活動です。
遊びの中で重要な位置を占めるのが、スポーツになります。
今回は、幼児期からスポーツをする大切さを体や心に与える影響から
考えていきます。
なかでも水泳にスポットを当て
その効用や子育てにおける活用術も提案します。
解説は、国士舘大学で水泳や水中での体力回復法を
研究する須藤明治教授です。
ご自身の競泳選手、コーチとしての経験も
踏まえアドバイスしてくれています。
子どもの肥満、体力低下が言われて久しくなります。
体力や運動能力の低下はデータにはっきり表れ、靴ひもを結ぶなど体を上手にコントロールする能力や、スキップなどリズムをとって
体を動かす能力の低下も指摘されています。
その対策としては、追いかけっこをしたり、自由に跳び跳ねたり
といった遊びを日常生活に取り入れることです。
それは遊ぶことによってさまざまな筋肉が動くことになり、運動機能の発達を促すからです。
思いっきり体を動かすという点でスポーツは遊びに含まれます。
現代は、私の子どもの頃と比べ、自由に体を動かして遊べる場が減っています。
子どもたちの体力増進は、幼稚園・保育園での遊びの時間、小学校の体育、スイミングスクールといった運動系の習い事、さらには野球やサッカーなどの地域のスポーツクラブが担っているように思います。
幼児期の遊びや運動は、体力や運動機能を向上させるだけでなく、脳の成長も促進させます。
ですから、運動が重要な意味をもつことを知って、家庭でも体を動かすためのいろいろな工夫をしてみることをお勧めしたいです。
3〜8歳までの5、6年間は、身長が1年に約5?伸び、体重は約2.3?程度増で推移します。
3歳ごろには、走ったり、跳んだりできるようになり、4歳になるとさまざまな全身運動が可能となります。
5歳では、それまでに習得した全身運動が徐々に安定して安全にできるようになっていきます。
この頃は、速く、しっかりと力強く行動できるよりも安定性や安全性が重要視されるのです。
さらに6歳では、歩く、走る、跳ぶ、泳ぐ、這(は)うなどの基礎的な運動能力の発達が加速するだけでなく洗練されていきます。
こういった運動能力の向上は、体に指令を下す脳の発達を抜きにしては考えられません。
脳の中では、五感から入ってくる刺激に反応して発せられる信号伝達がスムーズになり、子どもたちができる基礎的な運動のレパートリーが増大していきます。
また、知覚、思考、推理、記憶といった人間にとって非常に重要な認知機能を担う大脳皮質が成熟するにつれ、運動やものごとの認識ができる認知能力のレベルが上がっていくのです。
認知能力とは、外界からのさまざまな情報や、目の前にあるものがいったい何であるか、どういった性質をもつかを解釈して自らの判断基準や知識として定着させる働きをいいます。
「水をかけば、水が後ろに行きその相互作用によって体が前に進む」、「これはテニスの時に使うボールだ。ラケットの真ん中にちゃんと当たるとよく飛ぶ」という理解も認知能力によるものです。
乳児期が終わる頃から、いろいろなことを詳しく丁寧に教えてあげるようにすると、それらに興味を示しその後の発達につながっていきます。
認知能力が発達する時期は、見たもの、聞いたことをそのまま現実として受け入れ、それをそのまま頭の中にインプットするので、見本や手本を示すだけでなく本物に触れさせて強く印象づけることも大切です。
スポーツ選手にしても、テレビで見るのと、目の前で話を聞いたり、握手をするのでは心に入ってくるインパクトが全く異なります。
私たちの世代の野球少年は父親に連れられて試合を見に行き、「王(貞治)選手はスゴイ!」と感動したものです。
実は、これは魔法のようなもので、実体はないのです。
しかし、認知的能力の発達段階に経験したことが大きな影響を及ぼす、という見地からいえば、数多くの本物との出合いを重ねることが大切なのは疑う余地はありません。