2019.02.08 | 育児
どんな言葉で、子どもをほめたらいいの?
お母さまたちの子育てお悩み相談室【第5回】
叱る以上に難しいといわれるのが、「ほめる」こと。わが子の成長を促す一言をどんなふうに発せばいいのか、という悩みにお答えします。(記事監修/恵泉女学園大学学長 大日向雅美)
Q.子どもがお手伝いをしてくれても上手にほめることができてないな、と思います。ほめかたのポイントがあったら知りたいです。
初めての“立っち”や、初めての“あんよ”を見守った時のことを思い出してみてください。
危なっかしい姿に「もう少し! その調子」と精いっぱいの声援を送り、立ち上がったその瞬間うれしくて「できたねぇ!」と思わず抱きしめた、あの時の感動。
そこに「ほめる」ことの原点があるように思います。
ハードルを越えられるように応援したり、実際にできるようになって、その喜びを一緒に分かち合う時に思わず出る「頑張ったね」や「すごいね」。
他の人の気持ちがわかってきたからこそ言える「(ママが大変そう。)お手伝いする!」という心遣いへの「ありがとう」。
こういった子どもの成長への喜びと共感、感謝がほめることに自然と結び付くことが大切だと思います。
Q.「ほめて伸ばす」と耳にしますが、“ほめる”ことは子どもの能力を伸ばすために使うものではないのでしょうか。
「○○ちゃん、やればできるじゃない」「すごい! すごい!」そういった言葉かけが自然な感動からではなく、むしろ親の期待通りに子どもを動かそうとする気持ちのほうが強いとしたら、それは功利的過ぎるのではないでしょうか。
ほめ言葉を、子どもに何かをさせるためのおだてる道具にしてはいけないと思います。
「ここでほめたらこの子はお手伝いをする」「ドリルを何ページやったら、ごほうびをあげる」といった言葉かけでやる気にさせようとしても、本当の意味で子どものやる気は育ちません。
むしろ、就学近くになって知恵が働くようになると「その手には乗らないよ」と見透かされてしまうことも少なくありません。
最悪のパターンは、お母さまの思い通りにならない時に、手のひらを返したようにがっかりして、それを子どもの前で見せつけることです。
子どもは親の期待に何とかして応えようと健気に思い詰めるものです。親の期待通りにできなかったときには、自分は悪い子だと自信をなくしてしまいかねません。
人は生まれながらにして、強い好奇心と高い学習能力、環境や人に働きかける力をもっています。子どもは自らの力で伸びようとし、実際に伸びていくのです。
お母さま、お父さまにできることは、あまり口うるさく干渉したり、過程よりも結果を重視したりして子どもの自発的な思いの芽生えを阻害したり邪魔したりしないことです。
Q.わが子の自らの力で伸びようとする「すごいな」を探すポイントがあったら教えてください。
一人の人間として、わが子の言動に心の底から敬意を払える時、自然と心に届く言葉が発せられるように思います。
叱るよりほめることのほうがずっと難しいと感じるのは、まさにその点です。そのためにも、親はあまり立派でない方がよいかもしれません。
私には娘が2人いますが、ほめることにあまり苦労したことはありませんでした。
なぜなら私は不得手なことがたくさんありますし、失敗も数えきれないくらい。自分ができなかったことを娘たちができた姿を見て、幾度も感動をしてきました。
たとえば、私自身は幼稚園が嫌いで入園1週間後に早々と登園拒否を決め込んでしまいました。
でも、長女は保育園が大好きで、本当に毎日楽しそうに通っていて、そんな姿を見るにつけ本心から「あなた、本当にえらいわね」という言葉が口をついて出たのです。
誰だって自分ができないことを幼いわが子が成し遂げた時には、感動がわき起こりのではないでしょうか。
毎日、子どもに接していると、「こんなことができるようになった」ということがたくさんあるはずです。その一つひとつに対し、素直に「すごい!」と思える感性こそが子育てには必要かもしれませんね。
そんな親に見守られて、子どもは誇りや自信を育みながら、たくましく生きていってほしいと思います。