2018.06.06 | 育児
幼少期に育てたい力【第4回】
【第4回】
子どもの非認知能力を高めるために家庭でできること
生きる力の根幹をなす非認知能力を育てるポイントは、「何があっても大丈夫」「頑張ってやってみよう」という心を育むことに尽きます。
加えて、子どもの「嫌だ」という思いを上手に受け止めることも重要です。
その時に活用したい、白梅学園大学学長の汐見稔幸さんのおすすめの「4打数1安打のコミュニケーション」も紹介します。
Q.第1回で紹介されていた非認知能力を家庭で養うためには、何をすればよいのでしょうか。
この能力の大前提になるのが乳児期に無条件で子どもを愛することです。
というのも、非認知能力は脳の大脳辺縁系や脳幹と密接に関係しており、この部位は敵から逃げたり、安心できる場所を感じ取るといった生命を維持するために必要な「怖い」「安心」「好き」などの感覚をつかさどっています。
乳幼児期からお母さま、お父さまなど周囲の大人によって丁寧なかかわりを受けることで、この部位が健全に育っていくのです。
例えば、子どもが怖いものを見て恐怖を感じたり、不安である素振りが見えたりしたら、「どうしたの? 大丈夫よ。一緒にいるよ」と声をかけてください。
物事がうまくできない時には「何をやっているの」と否定せず見守って励まします。
そうすると「自分は受け入れてもらっている」「存在価値のある人間なんだ」という自己肯定感が育っていくのです。
その思いが定着すれば、非認知能力を伸ばすことは難しくありません。
その後は、「何があっても大丈夫!」「頑張ってやってみよう!」という前向きな姿勢や向上心が育っていきます。
幼少期に培われるこういった情動が、非認知能力の基礎となるのです。
子どもが幼少期を過ぎていたとしても、焦ることはありません。
どの年齢からでも伸ばすことはできるのですから。
Q.「嫌だ」という言葉を連発して、素直に従ってくれません。
そうなると好意的に見るのは本当に難しいと感じます。
4歳前後になって、言葉で嫌がらせができるとがわかったら、そればっかりやるんです。
理由なくやっている場合もありますが、遊びたいのに遊べないという不満が原因のときもあります。
そんな時にお母さまが「ちょっと、静かにして!」と言いたくなる気持ちもよくわかります。
でも、子どもがわがままを言ったり、親の言うことを素直に聞かなかったりしたとき、「なんでママの言うこと聞けないの!」などと頭ごなしに叱りつけることは避けたいものです。
「ママの言うことを聞くいい子でいなさい」という雰囲気を感じると、子どもは自分の本当の気持ちにふたをしてしまいます。
Q.子どもとの上手なコミュニケーション方法があったら教えてください。
子どもが常に親のいうことを聞くということはありえないので、「嫌だ」と言いだすことはよくあると思います。
その際に使うのが、「4打数1安打のコミュニケーション」です。
野球では、Kは三振を意味します。一方、HはHIT(安打)を示します。
まずは、子どもの「嫌だ」に対して「どうしたの?」と聞きます。
これが最初のK。
「だってこうなんだもん」との言葉に、「そうか、そういえば、あなたはこういうのは嫌いだったものね〜」と、一度は共感してみる。
これが2つ目のK。
次に「だけど、ママはこれだけしか時間ないのよ。どうしたらいいと思う?」と解決策を考えてもらう。
これが3つ目のK。
子どもが「そしたらこうするよ」と答えたらしめたもの。「やってくれるの? ありがとうね」と言って、やろうとしている行動を励ます。
これがH。
子どもと4回会話を交わし、最後には子どもが自ら行動するように促してみてください。
私が好きな野球に例えるのですが、つまりは4打数1安打。
お母さまとしては4打数4安打をねらいたいところでしょうが、残念ながらそれは現実的ではなさそうです。
最初からヒットをねらわずに、3打席はヒットのための準備を丁寧にします。
それが手堅い成果につながります。
Q.「4打数1安打のコミュニケーション」は、非認知能力を伸ばすことにつながるのですか?
「ママと話をすると、どんどんいいアイデアが出てくる」と子どもが感じるようになるのが理想です。
そういう会話が非認知能力を育てるのです。