2026.06.04 | スペシャル
プロが教える 幼児のための川遊び安全対策
公益財団法人 河川財団
菅原 一成さん

河川に関する各種調査や研究に取り組んでいる菅原さんに、川との接し方や安全対策について伺いました。
===========================================================
子どもの水難死亡事故は「川」が最多
川というのは、子どもの成長の場として非常に魅力的ですが、水難事故防止の対策が常に不可欠です。私たち河川財団は、学習指導要領に照らし合わせながら川での子どもたちの活動にどんなメニューがふさわしいかを考えるとともに、水難事故の調査に基づいて、事故への事前の備えを分かりやすく発信することを重点的におこなっています。
海や川からプールまで含めた水難事故全体で言いますと、2023年の1年間で死者数は816名、河川と湖沼池に絞ると327名。そのうち28名が子どもです。

子どもに関しては、河川・湖沼池での犠牲者数が海より2倍以上多くなっています。その要因としては、海の場合は、海辺に暮らしている場合を除けばたいていは家族で一緒に出掛ける一方で、河川は日本全国至るところにあり、子どもにとって気軽に行けて、行っている頻度も高いからだと思われます。川は身近な分だけ身近なリスクになっているのです。
転落防止柵等の設置、近づかないような指導、ライフスタイルの変化やレジャーの多様化などの複合的な要因により、水難事故は長期的に減少してきました。しかし、河川利用の活発化もあってか、近年では下げ止まりの傾向が見られます。
これまでの対策では限界がある以上、事故件数をさらにゼロへ近づけるためには、以前とは異なる対策が必要です。
一番良いのは、川で活動する人が全員ライフジャケットを着用すること。
ライフジャケットは昔よりも一般的になってきているようで、以前はアウトドアなどの専門店でしか手に入りませんでしたが、近年は夏場になるとホームセンターでも水着やビーチサンダルの横で売られるようになっています。
個人的な体感としても、キャンプ場で水遊びをしているところを見ていると、ライフジャケットを身に着けているお子さんをよく見かけるようになりました。
ただし、大人がライフジャケットを着けていることがあまり多くないため、大人が着用して手本を示すことが、子どもの着用率をさらに高める上でのポイントだと感じています。
ライフジャケットにはいくつかタイプがありますが、川での活動に適しているのは、速い流れの中でも脱げないものです。子どもは身体にくびれがなく腰のベルトだけでは脱げやすいため、股下ベルトがあるものを用意しましょう。もちろん、体型に合ったサイズのものを選ぶことも重要です。
川で楽しく遊ぶためのポイント
私たち河川財団と川で体験活動をおこなう専門家との間で検討を重ね、水難事故を防ぐためにもっとも重要なこととしてまとめたこの5つのことについて、国土交通省で分かりやすいイラストや動画を公開しています。
1. 誰かと一緒に行く
2. 大人もこどももライフジャケット着用
3. 上流の天気も確認
4. こどもから目を離さない
5. 大人は下流でスタンバイ
1.「誰かと一緒に行く」
子ども目線で言うと、保護者でも知り合いでも、とにかく安全管理ができる大人と一緒に行くということ。子どもだけだと、危険を知らせる看板に気づけず、万が一の際にも対処できません。

2. 「大人もこどももライフジャケット着用」
流されたときに溺れてしまうのは大人も同じです。子どもも大人もライフジャケットを着用しましょう。

3. 「上流の天気も確認」
今いる場所が晴れていても上流側で雨が降ればやがて下流へ押し寄せて来ます。急な豪雨で川の水があっという間に増えることもあります。

4. 「こどもから目を離さない」
ただ大人が一緒にいれば安心というものではなく、水難事故の6割は大人を含むグループで起きています。
ちょっと目を離した瞬間にお子さんが流されたり転落したりすることがありますので、目を離さないようにしてください。

5. 「大人は下流でスタンバイ」
お子さんが流されたとき、大人が上流側にいると間に合いません。
万が一、大人も流されてしまったり、お子さんを受け止めそこなった場合に備えて、下流にゆるやかなところがあるかどうかも考えて場所選びも慎重におこないましょう。


お子さんの将来に備えてすべきこと
お子さんの将来を考えると、危険だからといって「川には近づくな」一辺倒ではいけません。いずれ友達同士や自分ひとりで川へ行ったりキャンプに行ったりする機会もあるかもしれません。
そんなときに備えて、川へ近づくとどんなことが起きるのか、どういう対処をしたら良いのかを学んでおくことが必要になってきます。
完全に安全な川はありません。川は常に変化しており、普段は膝下程度の水位でも、雨が降った後は水位が高くなったり、川底の様子や流れが変わったりします。
陸上からでは川の深さや流れは分からず、実際に川に入って初めて、思っていたよりも深いことや流れが速いことを理解することになり、そのときにはもう危険な状況になっているかもしれません。

だからこそライフジャケットの着用が重要なのです。川へ入る予定がなくても、川へ近づくのであればライフジャケットを着ておく方が安全です。
また、川に入るつもりではなかったけれど、ボールや帽子やサンダルを追って溺れるケースも多くあります。
そのような事故を防ぐため、物は命にはかえられないものだから決して拾おうとしないように、物をなくしたことで罪悪感を覚えないように、事前にお子さんへ伝えておくことが大事です。
事前にスイミングスクールへ行っておくのも良いと思います。
川へ行く前にプールなどで浮くことの難しさや呼吸確保の重要性を知っておいたり、浮き具を使って自分の身体が浮くんだという安心感を得ていれば、川で流されるようなことがあってもパニックになりにくくなります。

可能性を広げる原体験のために
川は、幼児教育の指導要領で重視されている「遊びを通じた気づき」に適したフィールドであり、多様な生き物や植物に触れ、水の冷たさや流れを感じるなどの、全身での学びや気づきにつながります。
そのような原体験は、例えば小学生になって理科で生き物について教わったとき、その知識と結びついて、頭の中でランプが点るような気づきへとつながるかもしれません。また、川下りをして普段と違う風景を目にしたら、そのときの経験は、かつて川が物流の中心だった頃に思いを馳せ、歴史に目を向けるきっかけになるかもしれません。
そのような幼少期の貴重な経験は、興味や関心を膨らませ、可能性を広げる源になることでしょう。
だからこそ河川財団は、子どもたちがリスクを最小限にした上で、最大限に川の恵みを享受できることを願っています。
前述の注意点を守るだけでも多くの事故を防ぐことができますが、河川財団等のホームページではさらに詳細な情報が掲載されていますので、ぜひご確認ください。
河川財団ホームページ
https://www.kasen.or.jp/school/tabid67.html
国道交通省「河川水難事故防止ポータルサイト」
https://www.mlit.go.jp/river/kankyo/play/anzenriyou.html




