2020.02.15 | 水
寒い時期の水泳が体を強くする!
冬こそ、水泳で鍛えよう!【第1回】
人間が兼ね備えている身体機能のひとつに、「体温を一定に保つ」ことがあります。
冬は、プールに入った瞬間に「冷たい」と感じますが、この「冷たい」という刺激を受け、自律神経、心臓などが体温を維持しようと働き始めるのです。
「寒い冬こそ、体が本来もつ機能を鍛える絶好のチャンス」という国士舘大学 須藤明治教授にお話を伺いました。
体温調節機能を活性化する冬のプール
人間には気温や水温といった外的環境に左右されることなく、体温を一定に保とうとする体温調節機能があります。
寒い時に震えるのは、少しでも筋肉を動かし熱を生み出そうとするためです。
その他にも、毛穴からの熱放射が抑えられるように鳥肌が立ったり、体に蓄えた糖質や脂質をエネルギーとして燃焼させ、熱を発生させ“代謝”を促したりすることで体温を維持するのです。
例えば、冬に子どもたちがプールに行こうとして家を出て、冷え切った外気に触れると体温調節機能が作用し始めます。
さらにプールに入ると、ここでも体温調節機能が働きます。
というのもプールの水温は30℃前後と、体温より低く設定されているので、水に浸かった瞬間に感じるのは「冷たい」という感覚。
それが刺激になって「熱を奪われまい」として、「体温を保持しよう」というスイッチが入るのです。
実際に泳ぎだすと筋肉が熱を発生させ、体が熱くなっていきます。
皮膚には、冷たさを感じる“冷点”と温かさを感じる“温点”があり、その数は冷点のほうが圧倒的に多くなっています。
つまり、人間は暑い時に感じる“温熱刺激”よりも寒い時に感じる“冷刺激”を敏感に感じ取り、対応しているのです。
皮膚で感じる「冷たい」という冷刺激は、自律神経によって体の各部位へと伝わっていきます。
そのため冷刺激が加わることで、自律神経が鍛えられるのです。
このような体の仕組みから「寒い冬こそ、体が本来もつ機能を鍛える絶好のチャンス」だといえます。
冷刺激は心臓を強くする!
心臓から押し出される血流量が、体温調節に重要な役目を果たしているのをご存じでしょうか。
寒い時は、体から熱が発散されないように体内の血流量は制限されます。逆に暑い時は、血流を促すよう血管が開かれ、熱を外に逃がします。
血液を全身に循環させるために体中には血管が張り巡らさせていて、血液は血管を通って人間が生きていくために欠くことのできない酸素や白血球、栄養などを運んでいます。
しかし、冷刺激を感知すると血管は収縮するのです。
その一方で、各臓器に血液を送る“ポンプ役”を担う心臓は、収縮した血管に対しても大きな力で体の隅々まで血液を行き渡らせようとするので、心臓に負荷がかかってきます。
大人の血管は、加齢ともに劣化し弾力性が失われたり、コレステロールなどで狭くなって詰まりやすくなっていきます。それが原因で心臓疾患などを引きおこすことも珍しくありません。
しかし、子どもは血管がやわらかいので、血流量の増加という負荷によって、血管がさらに鍛えられるだけでなく、心臓の働きにもよい効果を与えるのです。
また、子どもは皮膚表面の静脈が大人よりずっと発達しているので、血流の調整による体温調節が容易で、寒い中でも走り回るとすぐに体が温かくなります。
このことは、真冬でも短パンやTシャツで過ごす「子どもは風の子」を体現している子どもたちが証明しています。
体温のリズムを活性化させる冷刺激
体温は、気温などに対しては一定に保とうとするものの、一日の中では波があります。
活動している日中は高く保たれ、就寝前は、脳や体を休ませるために下がるのです。
布団に入って体温が下がり始めると、すぐに眠ることができますが、寝つきが悪い時は、大抵、体温が下がっていないようです。
「睡眠の質をよくするために、昼間運動をするといい」と聞いたことがあるかもしれません。
体温のリズムを正しく働かせるためには、さまざまな刺激を与えて体温が柔軟に変化するようにしておくことが大事です。
しかし、日常生活では、夏はクーラー、冬は暖房と一年中快適に過ごすことが当たり前になっていないでしょうか。
こういった人工的につくられた環境下では、体温を自発的に調節しようという機会が減少しがちです。
体が本来もつ機能を高めるためにも、寒暖によって体のさまざまな機能が反応する感覚をしっかりと自分の体に定着させることが重要になってきます。
そうすることで体温のリズムが活性化するだけでなく、身体機能が高まります。
寒暖などの刺激に反応する力は、つねに磨いておきましょう。
怠っていると感度が鈍り、成長に必要ないろいろな役割を果たすホルモンの分泌も乏しくなりかねません。
この冬は、寒さを積極的に受け入れ、体が本来もつ機能を鍛えることをぜひ意識してみてください。