2019.04.19 | 健康
食物アレルギー 治療で就学前に6~7割が食べられるように
【医師監修】アレルギーに負けない!
最新治療法+予防&症状軽減法を知ろう!【第3回】
アレルギーのなかでも最も相談件数が増えている食物アレルギー。
子どものころの原因食物だった卵、牛乳、小麦などは、成長に伴い食べられるようになることも多いのです。
今、さまざまな研究成果によって治療の可能性が広がっています。
(記事監修/国立成育医療研究センター総合アレルギー科医長 福家辰樹)
食物アレルギーの3大アレルゲン 卵、牛乳、小麦
食物アレルギーの症状は、
食べ物によって引き起こされる局所的なじんましんやかゆみ、
顔面や唇の腫れ、
咳・呼吸時にでるヒューヒューやゼーゼーという喘鳴(ぜんめい)や
嘔吐(おうと)・下痢などから、
血圧低下や意識障害などの重篤な症状が出現するアナフィラキシーまで多岐にわたります。
その反応は、原因となる食べ物を摂取してから、2時間以内に現れる「即時型」反応と数時間から数日後に起こる「非即時型」反応の2つに分かれます。
前者は卵アレルギーを持つ人が卵を食べ、程なくしてじんましんや呼吸の苦しさを訴える場合で、アナフィラキシーもこのタイプに属します。
食物アレルギーの有症率が最も高いのは0歳、1歳。
離乳食を開始する生後7~8カ月に初めて卵を口にしてじんましんといったアレルギーの症状が現れて、診察を受けるというのが、ひとつの流れになっているのです。
食物アレルギーの3大アレルゲンとは卵、牛乳、小麦。
この3食品で「即時型」食物アレルギーにおける原因食物の全体の7割を占めています。
ただ、この3つは、少量でも食べ続けることでアレルゲンへの抵抗力がつくので、就学前には、自然寛解も含めて6~7割ぐらいの子どもたちは口にすることができるようになります。
ピーナッツや甲殻類や、乳幼児期にアレルギーがなかった食物に対して、学童期以降に症状が現れる場合もあり、これらは成人期にも持ち越すこともあります。
アトピー性皮膚炎の治療が食物アレルギー予防につながることも!
アレルギーマーチという言葉をご存じでしょうか?
アトピー性皮膚炎、食物アレルギーをもつ乳児は、アレルギー症状のない子どもに比べて、その後もぜんそくやアレルギー性鼻炎になる確率が高くなることがわかっています。
アレルギーマーチとは、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーから始まり、複数のアレルギーが発症していく一連の進行のことなのです。
この流れの川上にあるのは、乳児期に有症率の高いアトピー性皮膚炎か、食物アレルギーのどちらか?
それを突き止められれば、その後の進行を防げると長年考えられてきました。その結論が最近になってやっと出たのです。
肉眼では見えない卵や小麦の食べかすといったアレルゲンはほこりなどに潜み、私たちの身の回りに存在しています。
アトピー性皮膚炎の炎症は、そういったアレルゲンに接する窓となって食物アレルギーの発症を誘導することがはっきりしたのです。
ですから、アトピー性皮膚炎のある子どもは、まずは皮膚の炎症の治療に取り組み、肌をよい状態にしておくこと。
そうすることで、食物アレルギーが早く治るという症例が多くでてきます。
日常的食事療法と、緊急時対応の2つの考え方で対応
治療方法については、①日常の食事療法と②緊急時と2つの場面に即した考え方をもって対応していきます。
① 日常的に行う食事療法
正しい診断に基づいた、必要最低限の食物除去法が、今考えられている最も有効な治療法です。
除去については原材料だけでなく、調理の際の混入にも配慮が必要です。
単に除去できているかだけでなく、代替食品によって子どもの成長発達に必要な栄養が補われているかを定期的にチェックすることもポイントになります。
医師の指示の下、症状を起こさない程度で少しずつ口にするとアレルゲンに対する免疫力がつき、口にできるようになってくることも多いことは前述の通りです。
② 緊急時対応
アレルギー症状が出たり、原因食物を間違って食べたり触れてしまうことを想定し、事前にどうすればいいかを確認しておきます。
実際にそうなった場合、発見者は①その子どもから目を離さない、ひとりにしない。②助けを呼び、人を集める。③エピペンと内服薬をもってくるように指示、といったことをします。
その他にも、周囲の協力を得つつ緊急性を判断し、その対応にあたります。
詳しくは、「食物アレルギー緊急時対応マニュアル」(東京都健康安全研究センター)を参照してください。