2020.01.16 | 健康
スポーツのメンタルトレーニングを日常生活に応用!

オリンピック目前! 体を動かすことは楽しい【第3回】
言葉次第で子どものやる気は変わってきます。ポイントは対話と観察、褒めること。
これはスポーツのコーチが選手のメンタルトレーニングに用いている手法です。
これらを駆使してわが子の名コーチを目指すコツを紹介します。(記事監修/朝日大学教授 白石豊)
同じ目線に立って子どもの話に耳を傾けよう!
「子どものやる気を引き出すためにはどうすればいいですか」という質問をよく受けます。
最初からやる気のない子どもはいません。子どもは基本的には好奇心のかたまりです。
私は、子どもがやる気を失うのは、大人たちのかける言葉が大きく影響していると考えています。
「教育」は、英語でエデュケーション(education)と言い、本来、「引き出す」という意味があります。
つまり、人間が本来持っている良い部分を引き出すのがいい教育者であり、親です。
子どもをからっぽのコップだと思っていると、あれこれ言って、詰め込みたくなります。
しかし、すでに素晴らしいものが詰まっているとしたらどうでしょう。
それを外に出すのをサポートするのが、親の役目かもしれません。
上からの押しつけではなく、子ども自身のやる気を引き出すには、同じ目線に立って、あるがままに子どもの話に耳を傾けること。
よき教育者・親とは、聴き上手なものです。先入観や色眼鏡で子どもを見るのではなく、子どもが何を望んでいるのか心の声も含めて聴きましょう。
一緒に遊んでいれば、子どもに対して「次はどうしたい? もっと高く跳びたいんだったらどうしたらいいかなぁ?」と尋ねることもできます。
そうやって、会話をふくらませてコミュニケーションをとっていくのです。
観察して、褒めよう!
私は、学生時代に縁あって、小学校1年生に水泳を指導したことがあります。
彼はトラウマがあって、プールに顔をつけることさえできませんでした。
そこで洗面器に顔をつけることから始めて、どこに問題を抱えているのかを観察したうえで指導したところ、もともと運動能力が高かったこともあって、すぐに泳げるようになりました。
私がコーチをするときには、まず相手をじっくり観察します。
すると、人それぞれに必ず「ここだ!」という変わり目があります。
それを見逃さず、「すごいね!よくそこに気づいたね?」と本人の振り返りができるような褒め方をします。
むやみやたらにただ褒めたり、機嫌をとるのではなく、できるようになりたくて変えようとしている部分を見つけて褒めることが大切です。
人はだれしも自分が一生懸命やっていることに理解を示してもらえたら、うれしいものです。
それで、やる気もわいてくるし、信頼関係も生まれます。
逆に意図していないところをいくら褒めても、「ちっともわかっていないのに口ばっかりだ」と不信感を抱かせかねません。
ですから、やる気を出す言葉を発する前にお母さん、お父さんは子どもの状況をしっかりと観察する。
それは、幼児でも一流選手でも一緒です。言葉ひとつで子どもの意欲が俄然(がせん)高まります。
質問で考える力を引き出す!
できない時には、質問するのも重要です。例えば、野球でエラーした子どもには、どんな声をかけるべきなのでしょうか。
「どうしてそんなにエラーばかりするんだ。ボールを待っていないで、しっかり前に出て捕れ!」
と、一方的に指示・命令をするだけでは、子どもが萎縮しかねません。
考える力を引き出し、技術改善を図るとしたら、「バウンドのどこで捕ろうとしたのか?」「グラブはどんなふうに使っていたか?」といった具合に質問をして、できない原因がどこにあるのかを気づかせる。
そうやって自分自身を振り返ることで、次はどこに注意を向けたらいいのかを知る。
できないところが何かわかると集中力が増し、問題点解決に大きく近づきます。
そして、上手にできたときには、間髪入れず褒めるのです。

わが子の名コーチを目指そう!
1歳から6歳までの幼児は、本来、とても強い運動欲求をもっているものです。だから一日中動き回っています。
この時期は、一つのことを長い時間続けられるような集中力はありません。
同じことをやらせたときの集中力は1分がよいところです。
ですから、親子で遊ぶ時は、親が次々に違う運動をさせるようにしてください。
ほんのちょっと背伸びをしたらできるようにすると、やる気もわいてきます。
「できた! うれしい!」という言葉がでるように、常に子どもを観察し、小さな達成感を数多く経験させてあげましょう。
技術指導もさることながら、「楽しい、もっとやりたい」という気持ちをわき立たせ、やる気を引き出す。それがプロのコーチです。
是非、子どもたちに「体を動かすことは、楽しい」という体験をさせるための、コーチ役にチャレンジしてみてください。
幼児期は親がコーチ。わが子の名コーチを目指しましょう!
(了)