2019.05.07 | 健康
アレルギー予防・症状軽減のために家庭ですべきことは?
【医師監修】アレルギーに負けない!
最新治療法+予防&症状軽減法を知ろう!【最終回】
アレルギー疾患は、食事制限や服薬、外用薬の塗布など医師の指示に従って家庭でする治療が重要になってきます。
それとは別に自然治癒力強化も欠かせません。
最終回は、生活環境を清潔に保つことや食事、睡眠、外遊びなど症状改善や予防つながる生活習慣を紹介します。
(記事監修/国立成育医療研究センター総合アレルギー科医長 福家辰樹)
最大のアレルゲンはチリダニ! 掃除機で取り除く
アレルギーは薬の開発などに伴い治療ガイドラインが整備されて、治療は確実に進化しています。
しかし、どんな疾患も自らの持つ自然治癒力を最大限に引き出すことも大事なのです。
まず整えるべきは生活環境。
気管支ぜんそくでもアトピー性皮膚炎でも原因となるアレルゲンに、ダニがあげられます。
なかでも、室内に生息するチリダニが最も多くの影響を与えていることがわかっています。
また、卵アレルギーや小麦アレルギーのもとになる卵や、クッキーといった小麦製品の食べかすが、家庭のほこりに多く含まれていることも知られてきました。
しかし、どちらも目に見えないほどの小ささです。こういったアレルギーを引き起こす原因を取り除くためには、こまめに掃除機や粘着カーペットクリーナーをかけて、室内を清潔に保つことが大事です。
ダニに最もさらされやすいのは寝具。子どもは大人に比べて睡眠時間が長いので、寝具類も掃除機でダニやほこりを吸い取るなどの対策も重要なポイントになってきます。
たくさんの食品を口にし、腸内もダイバーシティ
海外の研究になりますが、3、4種類の食品に限定された食事しかしない1歳児は、さまざまな食品を口にしている子どもに比べて、アトピー性皮膚炎もぜんそくも発症しやすいという結果がでています。
これ以外にもさまざまな研究結果から、腸内もいろいろな細菌が活動する「ダイバーシティ」化させることが重要だとわかっています。
そのためにはいろいろな食品を口にすることです。
その際に気をつけたいのは、ビタミンやミネラルを豊富に含む野菜をしっかりとること。
そして、肉だけでなく魚も食べること。魚の油に豊富に含まれている短鎖脂肪酸は、病気を予防する効果があるといわれています。
人間というのも自然の一部です。こだわり過ぎることはありませんが、加工食品を減らし、なるべく素材のわかる“自然の恵み”を感じられる食生活を心がけてみるのもいいものです。
ステロイド、成長ホルモンを分泌する睡眠
子どもの睡眠が特に大事なのは、寝ている間に、身長を伸ばす成長ホルモンが分泌されるから。
成長ホルモンがよく分泌されるのは、午後10~11時といわれています。
また、ぜんそくの吸引薬やアトピー性皮膚炎の軟膏(なんこう)に含まれるステロイドは、私たちの身体から朝に多く分泌されるホルモンで、体内の炎症を抑える作用を有します。
咳がひどかったり、アトピー性皮膚炎がかゆくて夜眠れない状態が続くと、成長ホルモンもステロイドホルモンも十分に生じません。
薬がよく効き睡眠がとれるようになると、成長ホルモンが分泌され、それまで止まっていた子どもの身長が伸び始めるというのは、よく耳にしますし、ステロイドが不足すると症状が改善しにくいことがわかっています。
睡眠は病気の回復にとても重要な役割をするので、日中によく体を動かして夜は早く寝る。
夜はしっかり眠れるように治療しておくことは、子どもにとっては特に重要になってきます。
外遊びでビタミンDを分泌
アレルギーは温度や湿度とも関係しており、患者さんは南に比べ、気温・湿度ともに低い北のほうに多く分布しています。
加えて近年では、紫外線の量も発症に影響を与えていることが解明されてきました。
カルシウムの吸収を助けることで知られているビタミンDは、日光に当たることで、体内で合成されます。
このビタミンDがアレルギー予防に関連があるということが報告されています。
ですから、子どもたちが適度に外遊びをして、日照不足にならないようにすることは大事なのです。
不思議なもので子ども本人や母乳を出すお母さんがビタミンDを口から摂取しても予防効果には結びつかず、体内で分泌されたものでないと役に立たないのです。
このことは、ビタミンDが単独でアレルギー予防効果をもたらすのではなく、いろいろな条件が重なり合うなかでビタミンDが果たす役割が欠かせないと考えるのが理にかなうようです。
アレルギーの病態の解明は進んできたとはいうものの、人類にとって新しい病気だけに、わからないこともまだまだあります。
ただ、体質や生活環境などいろいろな条件が複雑に絡みあって症状が現れていることは確かです。
そして、アトピー性皮膚炎などでもぜんそくの吸入ステロイド薬のように画期的な薬の開発が進んで、さらなる治療実績向上が期待できるということも間違いがないようです。<完>