2019.12.19 | 健康
親子で一緒に室内で運動!
オリンピック目前! 体を動かすことは楽しい【第2回】
運動能力は、場所的、人的環境を整えつつ、さまざまな運動刺激を与えることで伸びていくものです。
子どもの運動能力発達にとても重要な幼児期の運動量を確保するために、親子でできる室内運動を提案します。
(記事監修/朝日大学教授 白石豊)
冬でも楽しく運動を!
幼児期は人生のなかでも特に意識して運動量を増やしたい時期。体に刺激を与えて、動く感覚をたくさん体に刷り込ませることが大事です。
現代は、子どもたちが外で体を目いっぱい動かせるような環境が減っています。
私たちの子どもの頃の鬼ごっこ、木登り、魚とりといった遊びは運動能力発達に大変有効でしたが、現代では環境面からそういった遊びをするのは難しい状況にあります。
寒くなるとどうしても外出を控えるなど、ますます運動から遠ざかってしまいます。気温の低下に、運動不足が加われば、血流が滞る原因ともなります。
ですから、冬は、どんなスタイルでもいいので、体を動かすことを心がけましょう。体を動かせればそれでいいと思います。車に乗らずに歩く、階段の上り下りなども積極的に組み入れてください。
運動による刺激は、筋肉を程よく伸張させ、血流をよくします。そのことによって代謝や体温が上がります。
寒さというハードルを乗り越え、運動量をキープしましょう。
冬はもちろん、季節を問わず毎日体をコンスタントに動かすために提案したいのが、室内での運動です。室内に限りませんが、安全面には特に十分気をつけて実施してみてください。
自宅で、親子で一緒にできる運動をご紹介します。
ポイントは、子どもが簡単にできる少し上のレベルの運動を、何種類かを組み合わせて、毎日10〜15分程度、まずは3カ月間継続することです。子どもによって運動能力は、異なるのでその子にあった強度からスタートしてください。
これが習慣になれば、子どもだけでなく、親自身の体力向上にもつながります。
また、一緒に遊ぶことで、親の子どもへの接し方やコミュニケーションのとり方が違ってきます。そんな実例を見てきました。
もっと運動量を増やしてあげたい、あるいは専門的にスキルを磨がせたいのであれば、スイミングクラブやスポーツクラブに通うのもひとつの手です。こうしたところのカリキュラムは、上手に組まれているので、バランスよく運動能力を伸ばしてくれるはずです。
【親子で一緒に室内で運動しよう!】
●コアラに変身
【鍛えられる能力】はう、よじ登る、ぶらさがる、体をコントロールする能力
【遊び方】親は足を肩幅に開き、両腕を横に伸ばして立ちます。子どもは親にしがみつき、しがみついたまま親の体を1周します。
●あらしの中のふね
【鍛えられる能力】歩く・走る、バランス感覚
【遊び方】子どもは足を開いてマットや布団の上に立ち、親が端を持って引っぱります。子どもは倒れないようにバランスをとって踏ん張ります。
●怪獣を倒せ
【鍛えられる能力】投げる、方向・距離感覚や用具を扱う能力
【遊び方】空き箱などに怪獣の顔を描いて的を作り、テーブルやタンスの上などに置きます。ボールを怪獣に当ててやっつけます。的に向かって、オーバーハンドスローでボールを投げられるように。的に当たってうれしいという気持ちを味わえるよう、的の大きさ、的までの距離を少しずつ調節します。
●ハンカチとり
【鍛えられる能力】捕る、方向・距離感覚、体をコントロールする能力
【遊び方】親はハンカチを上から落とし、子どもはひらひらと落ちてくるハンカチを手でとります。ハンカチの大きさや素材によって落ちる速度が異なるので、いろいろ試してみてください。
●ぴょんぴょん、天までとどけ
【鍛えられる能力】跳ぶ、リズム感覚、体をコントロールする能力
【遊び方】親と子どもが向かい合って手をつなぎ、子どもは両足をそろえて跳びはね、親は子どもを引き上げるようにします。リズムに乗って両足で上に高く跳べるようにするのです。
【運動効果を高めるための5つのポイント】
1.楽器や音楽でリズムをつける
音楽は子どもの動きを引き出し、運動のリズムを教えてくれます。
2.遊び歌を歌って
好きな曲を歌うことで運動のリズムができ、上達速度を上げます。
3.ゲーム形式に
単に投げたり取ったりするだけでなく、ドッジボールのようなゲームスタイルにすると、より楽しさが増します。
4.ときには自尊心をくすぐる言葉かけを
「難しいから、なかなかできないかも」という言葉かけで自尊心をくすぐると、「できるもん!」という答えとともに、発奮します。
5.競争を取り入れる
負けたくないという意欲が高まり、動きのスピードも速くなります。勝敗にこだわりすぎない程度に。
運動能力が伸びる時期に適切な環境を!
近年、大谷翔平選手、羽生結弦選手のような、10歳代から頭角を現し、世界で活躍する若い世代が特に目立ちます。
これらの優れた運動能力を有するアスリートたちは、「運動神経のいい親から生まれたから」と思われがちです。しかし、本当にそうでしょうか。
たとえば、元大リーガーのイチローさんのお父さんの場合、ご自身はスーパースターではありませんでしたし、わが子の才能に気づいても自らが指導することはありませんでした。幼い息子を自転車の荷台に乗せて、毎日バッティングセンターに通っていたそうです。
こうしてみると、いわゆる「運動神経のいい子ども」たちの能力は、決して遺伝ではないように思います。親が子どもの力を信じ、適切な時期に、場所的、物的、人的環境を整えることで、子どもはさまざまな運動刺激を与えられ、その能力を開花させた、とは考えられないでしょうか。
子どもの運動能力が伸びる貴重な時期に、適切な環境と運動刺激を与えていきましょう。